「保育士」と聞くと、女性が多いイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。実際、かつて「保母さん」という呼び名が一般的だった時代には、男性保育士はほとんど存在していませんでした。
歴史的変化
・1985年:男女雇用機会均等法制定により男性保育士が徐々に増加
・1999年:資格名が「保育士」へ改名
【この記事を書いた人】
・転職6回の現役男性保育士(33歳)
・保育士歴9年、5園での勤務経験
・現在は年収540万円、残業月3時間以下で働く
私自身も男性保育士になりたての頃は、将来の姿が見えず、給料や人間関係、結婚して家族を養えるのかなど、不安に感じることがたくさんありました。今回は、現役男性保育士である私が、保育士の給料、職場環境、そして将来像について詳しくお伝えします。

男性保育士としての将来像を知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。読み終えるころには、漠然とした不安が少し軽くなっているかもしれません。
男性保育士の現状データ

登録者累計 | |||
男 | 女 | 計 | |
令和6年4月1日 | 98.676 | 1.799.343 | 1.898.019 |
※子ども家庭庁による「保育士登録者数」のデータ参照。
上記のデータによると、日本で働く保育士のうち男性の割合はまだ少なく、全体の1割未満にとどまっています。子ども家庭庁の資料によれば、保育士全体のおよそ5〜6%ほどしか男性がいないのが実情です。
つまり、10人の保育士がいればその中に男性が1人いるかいないかという程度の割合となります。
保育士登録者数(令和6年4月1日現在)
性別 | 登録者数 | 割合 |
---|---|---|
男性 | 98,676人 | 5.2% |
女性 | 1,799,343人 | 94.8% |
合計 | 1,898,019人 | 100% |

これまでに5つの保育園で働いてきましたが、そのうち1園は男性職員が私ひとりだけでした。残りの4園では、私を含めて男性保育士が2人いる職場でした。
男性保育士の離職率は?

厚生労働省が公表している「令和6年賃金構造基本統計調査」(2025年3月時点)によると、女性保育士の平均勤続年数は8.7年であるのに対し、男性保育士は7.4年となっています。
また、保育士の平均年齢は女性が39.7歳、男性が37歳とされており、男性は若いうちに離職している傾向がうかがえます。
なぜ男性保育士は少ないのか?

1. 社会的イメージの固定観念
昔から保育の仕事は「女性が担うもの」という固定観念が根強く残っています。子どもの世話や家庭的なケアは女性の役割だという考えが、男性が保育士を目指しにくい雰囲気を作っています。
2. 職場での孤立感
男性が職場で一人という状況も多く、話し相手がいなかったり、相談しづらさを感じて辞めてしまう人もいます。また、「自分には向いていないかも」と考え、目指す前にあきらめてしまう人も少なくありません。
3. 社会的な偏見や誤解
男性が子どもと関わる仕事をしていると、不安に感じる保護者がいたり、誤解を受けることがあります。「触れ方が不自然に見えないか」「トイレや着替えのサポートに問題はないか」など、他の職員以上に気を配る必要があります。
4. 給与や待遇の問題
保育士は全体的に給与水準が高いとは言えない職業です。家族を養い、生活を安定させたいと考える男性にとっては、収入面で不安を感じることもあります。東京都福祉局のデータでは、男性保育士の退職理由で最も多いのが「給料が安いこと」でした。

私からのメッセージ
私も何度も保育士を辞めようと思ったことがあります。そして、一度は保育士を辞めて一般企業に就職したこともありました。しかし、保育の現場を離れてみて、「保育の楽しさ」や「子どもたちの成長を間近で見られる喜び」を改めて実感し、再び保育園に戻ってきました。保育士を目指してみたいと考えている男性の方には、ぜひ挑戦してほしいと思います。
給料に男女差はある?

保育士の給与は、公立・私立を問わず、経験年数や勤続年数、役職などによって決まることが多く、性別によって大きな差が生じることは少ないとされています。
私の収入変遷(参考データ)
3園目
年収約350万円
4園目
年収約330万円 + 家賃全額補助(月6万円×12ヶ月)
5園目(勤務1年目)
年収435万円
現在(勤務5年目)
年収540万円(キャリアアップ手当 月4万円を含む)
注意:1園目・2園目は数ヶ月しか勤務していなかったため、参考データとしては不十分です。
男性保育士のメリット

子どもにとって良いロールモデル
家庭や学校などで女性と関わる機会が多い子どもにとって、男性保育士は新鮮な存在です。やさしさと力強さを兼ね備えた男性の姿は、子どもの成長に良い影響を与えるとされています。

女性の立場から見ても、男性保育士は子どもたちにとても人気があります。特に外遊びの際、男性保育士が追いかけっこやサッカーなどをしていると、子どもたちが次々と集まってきました。子どもたちにとって、憧れの存在なのでしょうね。
力仕事が得意
男性保育士は、力仕事を必要とする場面で頼りにされることが多くあります。行事の準備や後片付けなど、体力が求められる業務では特に活躍できます。体格や体力を活かしてスムーズに作業が進む場面も多いため、職場全体の負担軽減にもつながります。

行事の準備など、力仕事には率先して取り組んでいます。一方で、私はピアノが得意ではないため、伴奏は得意な職員にお願いしています。このように、性別に関係なく自分の得意分野を活かせる職場は、とても働きやすい環境だと感じます。
防犯面で期待される
男性保育士は、防犯面でも頼りにされる存在です。体格や落ち着いた雰囲気が不審者への抑止力となるほか、緊急時にも冷静に対応できる安心感があります。子どもたちの安全を守るうえで、心強い役割を果たしています。

防犯面への配慮から、他クラスの遠足の引率を任されることもよくあります。
男児のトイレサポート
男性保育士は、男の子のトイレのサポートができる点でも貴重な存在です。特にトイレトレーニングの時期には、立って用を足す方法や身だしなみの整え方など、同性の立場だからこそ自然に教えられることがあります。

男性保育士がいることで、散歩や遠足などで公共施設を利用する際に、男児のトイレのサポートを安心して任せられるため、とても助かります。
職場の雰囲気がなごむ
女性だけの職場よりも、男性が一人いるだけで職場全体の雰囲気が和らぎます。

私自身、公立保育園で働いていた際に、男性保育士が在籍していたときと、異動でいなくなったときの両方を経験しましたが、職場の雰囲気が大きく変わるのを実感しました。
男性保育士のデメリット

職場での孤立感
男性保育士はまだまだ少数派なので、同じ立場で話せる仲間が少ないと感じる人もいます。ちょっとした悩みを相談しづらいことも、働きにくさにつながる原因です。

私が勤務した5園のうち、1園では職場に男性は私ひとりだけでした。女性職員との関係づくりには少し時間がかかることもありますが、同じ思いを持って働くうちに、徐々に打ち解けることができます。どうしても職場の人間関係に悩んでしまう場合は、思い切って転職し、新しい環境で人間関係を築くのも一つの選択肢です。
周囲の目への配慮
特に小さな子どもの着替えやトイレの介助など、デリケートな場面では気を使うことが多いです。保護者や同僚から誤解されないように、いつも慎重に行動しなければならないことがあります。
キャリア・収入面での不安
保育士全体の課題でもありますが、給与が高くないことや、キャリアアップの道が限られていることに不安を感じる男性もいます。家族を養う立場になると、将来を考えて転職を考えるケースもあります。

キャリアや収入面に不安がある場合は、就職活動の際にキャリアアップ制度の有無、各種手当(住宅手当など)、福利厚生、年収などをしっかり確認することをおすすめします。面接時に自分で聞きづらいと感じる場合は、転職エージェントを活用するのも一つの方法です。
採用に消極的な園もある
園によっては、男性保育士の採用に消極的なところもあります。「着替えやトイレの補助などで保護者からの理解が得られにくい」「これまで女性ばかりの職場だったため、体制を整えるのが難しい」といった事情があるようです。

就職活動中、園の求人を見て電話をかけたところ、「男性保育士は採用していません」と断られたことが3回ありました。その点、転職エージェントを利用すれば、「男性保育士歓迎」の園を紹介してもらいやすく、自分で探すよりも早く見つかる可能性があります。
男性保育士のキャリアパス

1. キャリアアップ研修制度の活用
「保育士等キャリアアップ研修」を受講することで、専門性を高めることができます。この研修は2017年から始まった制度で、8つの分野に分かれています。
研修分野
- 乳児保育
- 幼児教育
- 障害児保育
- 食育・アレルギー対応
追加分野
- 保健衛生・安全対策
- 保護者支援・子育て支援
- 保育実践
- マネジメント
取得可能な役職と手当
- 職務分野別リーダー:月額最大5,000円の処遇改善手当Ⅱ
- 専門リーダー・副主任保育士:月額最大4万円の処遇改善手当Ⅱ
注意:職場によっては、処遇改善手当Ⅱを申請していない園もあります。キャリアアップ研修の受講を検討している場合は、面接の際に事前に確認しておくことが大切です。
2. 公立保育園での勤務
公立保育園では、基本的に自治体の職員(公務員)として採用されます。年齢や経験年数に応じて給与が段階的に上がる「昇給制度」が整っており、安定したキャリアを築きやすい環境です。
メリット
- 安定した昇給制度
- 長期的なキャリア形成
- 管理職への道筋が明確
- 福利厚生が充実
注意点
- 年齢制限がある場合
- 競争率が高い
- 試験対策が必要
- 計画的な準備が重要
3. 独立・起業
向上心のある方は、独立して保育園を開設したり、ベビーシッター事業などで起業することも可能です。現場での経験があれば、保育士の気持ちを理解しやすく、事業を始めるうえでも大きな強みとなります。
可能性のある事業
- 小規模保育園の開設
- ベビーシッター事業
- 保育関連のコンサルティング
- 保育士向けの研修事業
まとめ

男性保育士はまだ少数派であるため、周囲と打ち解けるまでに時間がかかったり、誤解されないように配慮が必要だったりと、決して楽な環境とは言えません。しかしその一方で、力仕事や外遊びでの活躍、防犯面での安心感など、男性ならではの強みを発揮できる場面もたくさんあります。
子どもたちや保護者との信頼関係を丁寧に築いていけば、職場での評価も高まり、やりがいを感じながら働くことができます。環境に慣れるまでは大変なこともありますが、チャンスはしっかりと用意されている仕事です。

転職6回の経験者からのメッセージ
男性保育士の将来が見えず不安に感じる方も多いと思います。私自身も転職を繰り返し、ようやく結婚し家族を養える職場に出会えました。今の職場で将来が見えないと感じるなら、転職によって新たな可能性が開けるかもしれません。
あなたへのエール
男性保育士として働くことは、確かに挑戦的な道のりです。
しかし、子どもたちの笑顔と成長を間近で見られる喜びは、どんな困難も乗り越える価値があります。
あなたの勇気ある一歩を応援しています。
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